出向に対応した産業雇用安定助成金の概要を紹介します。

「令和2年度第3次補正予算」が、令和3年1月28日の参議院本会議で可決、成立しました。

厚生労働省の関係では「新型コロナウイルス感染症にかかる雇用調整助成金の特例措置の延長」「産業雇用安定助成金(仮称)の創設」「人材開発支援助成金」などが予算計上されています。今回は昨年末に公表されてる「産業雇用安定助成金(仮称)」のご案内について取り上げたいと思います。

雇用調整助成金にも雇用の維持を図る事を目的とした「出向」を対象とした助成金はありました。新設される「産業雇用安定助成金(仮称)」と大きく違うのは、助成金の対象事業主が「雇用調整助成金」の場合、出向元事業主のみであったのに対して新設される「産業雇用安定助成金(仮称)」では出向元と出向先の双方の事業主に対して助成される事になります。

出向契約は出向元事業主と出向先事業主との間で契約を結びその中で出向労働者の賃金について負担割合を取り決めます。その負担割合に応じて助成額が計算されます。この助成額について「産業雇用安定助成金(仮称)」の場合は双方の事業主を対象とする事になりました。

 

助成金の目的

「産業雇用安定助成金(仮称)」は、新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた事業主が、雇用過剰となった従業員の雇用を守るため、人手不足などの企業との間で「雇用シェア」(在籍型出向)により雇用維持する取組みを支援する事を目的としています。その為、前提として出向期間終了後は元の事業所に戻って働く事とされています。

 

助成金の対象

・ 新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた為、雇用維持を目的として出向により従業員を送り出す事業主(出向元事業主)この従業員(労働者)は雇用保険の加入者である必要があります。

・ 当該労働者を受け入れる事業主(出向先事業主)

 

助成金の額

「出向運営費」と「出向初期経費」の一部が助成されます。

・出向運営経費
従業員を在籍型出向により送り出す事業主及び当該労働者を受け入れる事業主に対して、「賃金」、「教育訓練」及び「労務管理」に関する調整経費等、出向中に要する経費

助成率

・出向初期経費
従業員を在籍型出向により送り出す事業主及び受け入れる事業主に対して、就業規則や出向契約書の整備費用、出向に際して出向元であらかじめ行う教育訓練及び出向先が出向者を受け入れる為に用意する機器や備品等の出向に要する初期経費

初期費

 

受給までの流れ

(公財)産業雇用安定センターへ先ずはご相談される事をお勧めします。出向のマッチング企業が見つかりましたら以下の流れで出向に関する手続き、助成金の申請に関する手続きと進めていきます。就業規則に出向に関する規定を追加する事も必要です。

受給流れ

(公財)産業雇用安定センターのホームページ(http://sangyokoyo.or.jp/)では「受入情報」「送出情報」が検索できます。
ご参考まで・・・

 

まとめ

雇用調整助成金の特例措置がいつまで続くのか不透明な中、従業員の雇用維持に苦慮されている事業主が多くいらっしゃると思います。従業員に出向によって自社には無いノウハウを習得したり、新たなスキルを身に着け自社へ戻って貢献してもらうといった事も可能かと思います。アフターコロナを見据え従業員のスキルアップやモチベーションの維持に他社への出向も検討されるのは良い事かもしれません。

これまで関連会社間での出向は多く実績がありましたが、関連会社以外ではそれほど多くないようです。自社にない経験を積んだ従業員は会社にとって大きなプラスになると思いますので、現在の状況をポジティブに考え他社に先駆け取り組むべきかもしれません。いずれにしろ「雇用安定助成金(仮称)」の早急な開始が望まれます。