労働者を雇えば会社に必要な書類は助成金の活用に必要です
労働基準法は、労働者の賃金や労働時間、休暇等の主な労働条件について、最低限の基準を定めたものです。労働者を雇用すれば法定帳簿を整え保存する義務があります。これらの帳簿は助成金をもらう為にも必要な書類になります。
助成金とは
厚生労働省が主に労働者の雇用の安定を促すために会社に対し掛かった経費等の一部を補助する返済不要のお金です。
少子高齢化や多様な働き方といった労働環境の変化に伴い人材採用難や社員の流出等、人材の確保が難しくなってきています。それらの対応は企業とって大きな負担となっています。助成金は企業の負担を少しでも減らすことができる業種を問わず活用できるものです。
助成金の種類
助成金には様々な種類がありそれぞれ助成される対象が違います。下記のような場合に助成金を活用することができる可能性がある代表的な事例です。
- 経営が悪化する中で従業員の雇用を維持する場合
- 就職が困難な者を企業が雇用する場合
- 労働者の職業能力の向上を図る場合
- 育児や介護など仕事と家庭の両立を支援する場合
- 従業員の処遇を改善する場合
厚生労働省のHPの助成金検索ツールで貴社にあった助成金を探すことが可能です。
助成金申請に必要な帳簿
助成金をもらうには労働関係の法律に基づいた、労務管理がされている事が必要です。各種帳簿類、就業規則は添付書類として確認されます。必要な帳簿類は厚生労働省HPに参考様式が掲載されています。整備されていないのであればダウンロードして使用してください。
賃金台帳
賃金台帳は賃金の支払いのたびに記入します。賃金は毎月1回以上支払う必要があるので台帳も毎月1回以上記入が必要です。必要記載事項は以下の通りです。
- 氏名
- 性別
- 賃金計算期間(原則として、日々雇い入れられる者を除く)
- 労働日数
- 労働時間数
- 時間外労働、休日労働、深夜労働の時間数
- 基本給、手当その他賃金の種類ごとにその額
- 賃金の一部を控除した場合には、その額
出勤簿(タイムカード)
使用者は労働者の労働時間を適切に管理する必要があります。給与計算にも必要な情報です。その為労働者の勤務について適正に把握できる帳簿の整備が必要になります。単に出勤日のみを記載するのではなく、勤務時間等も把握できるタイムカード等の整備が望ましいでしょう。出勤簿(またはタイムカード等)は一般的に、以下の内容が把握できるものを作成します。
- 氏名
- 出勤日
- 出勤時刻、退勤時刻、休憩時間等
雇用契約書(労働条件通知書)
労働者を雇用する場合、労働条件通知書を交付する必要があります。労働基準法では労働契約締結時に労働条件を明示した書面を交付することを義務付けています。労働条件通知書は、あくまでも労働条件の明示が目的であるため、法律上は従業員に署名を求める必要はないと解されています。
一方、雇用契約書の作成については、法律上の明確な規定は存在しません。労使双方にとって誤解のないようにしておくため、労働契約においては契約書を作成し、労働者および使用者の合意によって成立したとわかるよう、両者の署名や捺印をしておくと、後々のトラブルをある程度予防できます。「労働条件通知書」と「雇用契約書」をそれぞれ作成するのが面倒な場合には、「労働条件通知書 兼 雇用契約書」の作成がお勧めです。定めなければならないものは以下の通りです。
■必ず明示しなければならないこと
- 契約期間に関すること
- 期間の定めがある契約を更新する場合の基準に関すること
- 就業場所、従事する業務に関すること
- 始業・終業時刻、休憩、休日などに関すること
- 賃⾦の決定⽅法、⽀払時期などに関すること
- 退職に関すること(解雇の事由を含む)
- 昇給に関すること
■定めをした場合に明示しなければならないこと
- 退職手当に関すること
- 賞与などに関すること
- 食費、作業用品などの負担に関すること
- 安全衛生に関すること
- 職業訓練に関すること
- 災害補償などに関すること
- 表彰や制裁に関すること
- 休職に関すること
就業規則
常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出なければならないとされています。そもそも就業規則とは、自社の従業員に対する労働条件を画一的に定めた社内規定です。労働条件を画一的に設定することは、従業員に対する処遇を公平かつ明確にし、労務管理や企業経営を効率的に行うことにつながりますので、従業員が10人未満であっても、就業規則を作成しておくことをお奨めします。
常時使用する従業員数が10人未満であれば就業規則を作成し労働基準監督署へ届出る必要はありませんが、助成金を規定がないと申請ができないものがほとんどです。記載事項は以下の通りです。
■絶対的必要記載事項
- 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合おいては就業時転換に関する事項
- 賃金の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
■相対的必要記載事項
- 退職手当に関する事項(適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払い時期に関する事項)
- 臨時の賃金等(退職手当を除く)及び最低賃金に関する定め
- 食費、作業用品その他労働者に負担させる事項
- 安全及び衛生に関する事項
- 職業訓練に関する事項
- 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
- 表彰及び制裁の種類及び程度に関する事項
- 前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項
■任意的記載事項
- 絶対的記載事項、相対的記載事項いがいで任意で定めることができる事項
記事「就業規則作成のすすめ」で就業規則について記載しています。
おわりに
これらの書類は企業が日頃労務管理を行う上で必要な書類や規定類です。しっかりと整備し助成金を活用することにより経済的な負担を減らすことができます。逆に整備されていないと罰則の適用がありますので注意していただきたいと思います。