育児休業、介護休業が取得し易くなります。改正のポイント
令和3年6月9日、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律 (令和3年法律第 58 号」が公布されました。女性の育児休業取得率は80%代で推移しているのに対し、男性の育児休業取得率は、12.65%となっています。令和元年度の7.48%から大きく上昇したものの育児休業を希望したが取得できなかった者の割合が約4割あり、休業取得の希望が十分にかなっていない状況にあります。出産・育児等を理由とした離職を防ぎ、男女ともに仕事と育児の両立ができるようにする事で少子高齢化に伴う人口減少に歯止めをかけることが大きな狙いです。
男性の育児休業取得率
政府目標:令和7(2025)年:30%
改正のポイント
1,男性版産休の新設(産後パパ育休)
男性の取得ニーズの高い出生直後の時期について、現行の育児休業よりも取得しやすい制度が設けられました。女性が産後休業期間中に、男性が柔軟に育児休業を取得することが可能になる仕組みです。
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- 子の出生後8週間以内に合計4週間まで育児休業を取得することが可能になります。
- 休業の申出期限は、現行の育児休業(1か月前)よりも短縮され原則休業の2週間前までに申出を行なえば育児休業を取得できます。
- 分割して2回まで育児休業を取得でき、例えば2週間の休業を2回取得するという事も可能です。(現行の育児休業は分割不可)
- 労使協定を締結している場合に、労働者と事業主の個別合意により 、事前に調整した 上で休業中 に就業することを可能とする。(現行の育児休業は就業不可)
2,雇用環境の整備の義務化
職場の雰囲気や制度を知らないことで育児休業を申出ないことを防ぐため、育児 休業を取得 しやすい雇用環境 整備や妊娠・ 出産の 申出をした労働者に対する 個別の周知・意向 確認が義務付けられました。
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- 研修や相談窓口の設置等、育児休業の申出・取得しやすくするための雇用環境の整備に 関して事業主が配慮することが求められます。
- 妊娠・出産(本人又は配偶者)の申出をした労働者に対して育児休業取得の働きかけをすることが求められます。事業主は個別の制度周知及び休業の取得意向の確認のための措置を講じなければなりません。
3,育児休業の分割取得可能
子の出生直後の8週間を除く期間についても、分割して2回まで取得することを可能となります 。夫婦交代で育児休業を取得しやすくなるため夫婦でともに育児を担うことができます。また、保育所に子供を預けられない等の理由から育児休業を延長する場合、現行の制度では育児休業の開始日が各期間(1歳~1歳6ヶ月、1歳6ヶ月~2歳)の初日に限定されておりましたが、開始日を柔軟化することで夫婦交代で各期間の途中で夫婦交代も可能となります。
4,有期雇用労働者の休業取得要件緩和
雇用形態にかかわらず育児休業及び介護休業の取得しやすくなるよう「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」であることという要件が廃止しされます。労使協定を締結した場合には、無期雇用労働者と同様に、事業主に引き続き雇用された期間が1年未満である労働者を対象から除外することは可能です。
5、育児休業取得状況の公表
プラチナくるみん認定企業のみ公表の義務があった育児休業取得にかんする事項について常時雇用する労働者数が 1,001人以上の事業主に対しても公表が義務付けられます 。具体的な内容は、男性の育児休業等の取得率又は育児休業等及び育児目的休暇の取得率を予定されています。
新制度における働き方のイメージ
おわりに
育児・介護休業法の改正にあたって規定を整備するなどした企業に対して「両立支援等助成金」を活用することができます。両立支援等助成金は、仕事と家庭の両立を推進する事業主を支援するための制度です。「両立支援等助成金」には6つのコースがあります。
その中で「出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)」と「育児休業等支援コース」がおすすめです。「出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)」は男性労働者が育児休業を取り易い職場風土づくりに取り組み実際に育児休業を取得した場合に助成され「育児休業等支援コース」は育児休業の取得や職場復帰に対して支払われる助成金です。
「出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)」の支給額
「育児休業等支援コース」の支給額
※2022年(令和4年)4月1日から段階的に改正が予定されています。施行日は以下の通りです。
- 男性版産休の新設 ⇒2022年10月1日施行 ※
- 雇用環境の整備の義務化 ⇒2022年4月1日施行
- 育児休業の分割取得可能 ⇒2022年10月1日施行 ※
- 有期雇用労働者の休業取得要件緩和 ⇒2022年4月1日施行
- 育児休業取得状況の公表 ⇒2023年4月1日施行
※ 2021年9月28日更新