男性の育児休業対応、両立支援等助成金(出生時両立支援コース)の概要

 

人材不足に悩まされる企業が増加しています。少子高齢化が進み人材確保がより困難になっていくことは容易に想像されます。人材採用が難しい状況の中、人材を確保する為に離職者を減らす努力が企業に求められているといえます。良い人材に長く勤めてもらうには、企業が従業員の多様な働き方に理解を示し、従業員が働き続けやすい職場環境を整えることが重要になってきます。

従業員の仕事とプライベートの両立を支援するために働きやすい職場環境を整えた企業に支給される助成金があります。その中で男性が育児休業を取得した場合に支給される「出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)」を紹介したいと思います。

出生時両立支援コースの概要

育児休業の開始日の前日までに男性労働者が育児休業や育児目的休暇を取得しやすい職場風土作りに取り組み、連続14日以上の育児休業を取得したこと(中小企業においては連続5日以上)や合計8日以上の育児目的休暇を取得したこと(中小企業においては合計5日以上)により事業主に対して支給されます。

育児目的休暇とは、育児・介護休業法第24条第1項に規定する、小学校に入学するまでの子について男女とも取得できる休暇制度のことで例えば子の出生前後に配偶者の出産支援や、保育園の入園式などに出席するために休暇をとることができる制度です。
※子の看護休暇、介護休暇及び年次有給休暇とは異なる制度である必要があります。
※導入に当たっては、労働協約または就業規則への規定が必要になります。

 

支給額

()内の金額は生産要件を満たした場合の支給額です。

「個別支援加算」とは職場風土作りの取組とは別に対象の男性労働者に対して、育児休業の取得を個別に後押しする取組を行った事業主に対して支給されます。育児休業の申出日までに取組を行うことが必要です。

  1. 対象の男性労働者に個別に書面などで育児休業中や育児休業後の賃金や配置などの待遇や労働条件について周知していること
  2. 育児休業の取得を促すための個別面談を行うこと
  3. 対象の男性労働者の上司に対して、当該労働者に育児休業の取得を促している旨を説明すること
  4. 当該上司に、対象の男性労働者に周知した書面などを提示すること

 

職場風土作りとは

男性が育児休業等を取得しやすい「職場風土作り」として、以下のいずれかの取り組みを育児休業/育児目的休暇をとる前に行います。

  1. 男性労働者の育児休業 / 育児目的休暇取得に関する研修の実施
  2. 男性の育児休業制度の利用を促進するための資料配布等
  3. 男性労働者の育児休業 / 育児目的休暇取得について、企業トップなどから社内への呼びかけ、及び厚生労働省のイクメンプロジェクトサイトを利用した「イクボス宣言」や「イクメン企業宣言」の実施
  4. 育児休業 / 育児目的休暇を取得した男性労働者の事例収集(体験談など)及び社内周知

 

※その他次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、労働局に届け出る必要があります。

一般事業主行動計画の策定・届出等について

就業規則の定めが必要

育児休業開始前に以下の制度を定める必要があります。

  • 育児・介護休業法第2条第1号に規定する育児休業
  • 育児・介護休業法第23条に定める育児のための所定労働時間の短縮措置
  • 育児休業及び育児目的休暇に係る手続や賃金の取扱等

 

※就業規則の作成・届出の義務がない事業所においても、制度が明文化されていて、労働者に周知されていることが必要です。

生産性要件について

生産性要件を満たした場合、多くの助成金で、その助成額又は助成率が大幅に割り増しされます。

助成金の支給申請を行う直近の会計年度における「生産性」が、以下のいずれかの要件を満たしている必要があります。

  • その3年前に比べて6%以上伸びていること
  • その3年前に比べて1%以上(6%未満)伸びていること(金融機関からの一定の「事業性評価」を得ていることが必要)

※ 3年度前の初日に雇用保険適用事業主であることが必要です。

生産性要件算定対象となった期間について、雇用する雇用保険被保険者を事業主都合によって解雇等(退職勧奨を含む)していないこと。

おわりに

令和3年の通常国会で成立した改正育児・介護休業法が、令和4年4月1日から段階的に施行されます。「男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組み」については令和4年10月1日に施行されます。男性正社員の「育児休業の取得状況と取得希望」についての調査で育児のためになんらかの休暇・休業の取得を希望していたが、利用しなかった割合は37.5%とされる調査結果もあり、制度施行後は男性社員の育児休業の利用が増えることが予想されます。

 

改正育児休業の概要は育児休業、介護休業が取得し易くなります。改正のポイントをご覧ください。

 

男性が育児をすることが当たりまえになるのかもしれません。育児休業を取得しやすい職場環境を整備し助成金を積極的に活用して頂きたいと思います。