業務改善助成金を活用した生産性を向上させる取組み
物価対応や人材確保のために賃金を引き上げざるを得ない状況の中、原資の確保に苦慮されている経営者様か多いのではないでしょうか?
さらに政府は「できる限り早期に最低賃金の全国加重平均が 1,000円以上となることを目指し、引上げに取り組む 。」としており、毎年10月には最低賃金の引上げがあり最低賃金付近の金額で労働者を雇っている企業は賃金の引き上げを行わなければならない状況にあります。
そこで企業の生産性向上により付加価値を高め賃金負担を軽減すること目的とした助成金「業務改善助成金」についてご紹介したいと思います。
※参考 令和4年全国加重平均:961円
助成金の対象企業
助成金の対象は中小企業・小規模事業者になります。
事業所のある地域別最低賃金をご確認ださい。すでに高額な賃金を支給している企業は対象になりません。雇用する労働者の賃金について一番低い労働者の時給と地域別最低賃金との差額が30円以下の企業が対象になります。
地域別最低賃金の全国一覧 (厚生労働省HP)
(例)京都府 968円(地域別最低賃金)⇒時給が998円までの労働者がいる企業が対象
助成金の概要
業務改善助成金とは事業場内で最も低い賃金(これを「事業場内最低賃金」と言います。)を30円以上引上げ、生産性が向上するような設備投資を行った場合にかかった経費の一部を助成金として支給される制度です。
「事業場内最低賃金」とは事業場すなわち本社や工場、支店など事業場ごとに雇用している労働者の中で1時間当たりの賃金額が一番低い者の賃金を指します。
賃金を事業場内最低賃金引き上げた後に就業規則等へ引き上げ後の賃金額を下限の賃金額とし定める必要があります。
生産性が向上する設備と聞くと難しく感じるかもしれませんが、設備の導入前と導入後を比較して作業効率が○○%上がったという事が確認できるものでなくとも手作業で行っていたものを機械で行うことで自動化した等、明らかに生産性が上がると分かるものであれば良いようですのでハードルは高くないと思います。
業務改善助成金リーフレット (厚生労働省HP)
対象となる取組み
事業所ごとに事業場内最低賃金の引き上げ計画と設備投資等の計画を作成して申請を行います。賃金の引き上げは雇入れ後3月を経過した労働者である必要があります。また全ての労働者の賃金を新しい事業場内最低賃金以上まで引き上げる必要があります。
交付決定後に計画通りに事業を進め、事業の結果を報告することにより、設備投資にかかった費用の一部を助成金として支給されます。
※ 交付決定前に行った設備投資等は助成対象となりません。
助成額及び助成率
では助成金はいくら支給されるのでしょうか?
助成金の支給額を計算するには助成率と助成額の上限の仕組みを理解する必要があります。
1,助成率
引上げ前の事業内最低賃金額に応じて助成率が定められています。
例えば事業場最低賃金が900円であれば870円以上920円未満にあたりますので助成率は4/5になります。(生産性要件を満たす場合9/10)
2,上限額
「事業場内最低賃金の引き上げ額」と「引き上げる労働者数」に応じて支給される助成上限額が決まります。(30円以上引き上げる必要があります。)
※10人以上の上限額区分は、特例事業者が、10人以上の労働者の賃金を引き上げる場合に対象になります。
※特例事業者とは
3,賃金を引き上げる労働者数のカウントの仕方は少し難しいので例を示します。
(例)AさんBさんCさんDさんの計4人の従業員がいたとします。
それぞれの時給がAさん900円 Bさん920円 Cさん920円 Dさん930円としたときAさんの時給900円が事業場内最低賃金となります。
以下の例の場合30円コースを選択しAさんの時給を30円引き上げ930円とします。そうすると全ての労働者の賃金を新しい事業場内最低賃金以上まで引き上げる必要がありますのでBさんCさんDさんについても時給を930円以上にする必要があります。
そこでBさん940円 Cさん950円 Dさん960円 へ引き上げました。というのが以下の図になります。
30円コースを選択していますので、30円以上引き上げた労働者数をカウントします。AさんCさんDさんの3人なのですが、Dさんの引き上げ前の時給は引き上げ後の事業場内最低賃金と同じ額なので対象にはなりません。よってAさんとCさんの2人が対象労働者となります。
上限額の表で確認しますと30円コースの引き上げる労働者数2~3人に該当しますので支給上限額は50万円(30人未満では90万円)となります。
まとめ
いかがだったでしょうか、人材確保の観点からも賃金の引き上げは避けては通れない状況にあり中小企業・小規模事業者にとっては使える助成金等は活用していきたいところだと思います。
今回ご紹介した業務改善助成金は単に賃金を引き上げれは良いというわけではなく、生産性向上のための設備投資が必要です。どのような設備投資が対象になるのか等詳細は厚生労働省HPにてご確認ください。
業務改善助成金(厚生労働省HP)